「風邪ひいた。早く治るのを出してくれ」
店頭でこんな切り出しで風邪薬を求めにくる方がいらっしゃいます。こういう風に注文をつけられると正直ちょっと戸惑ってしまいます。「早く効くのを・・・」ならわかるんですけど。
ポイントは「治る」と「効く」の違いです。
Contents
風邪薬はそれぞれの症状を抑える成分の組み合わせ
「風邪を治す薬を発明したらノーベル賞ものだ」
こんな言葉があります。
「でも風邪薬って売ってるじゃん。どゆこと?」
ってなりますよね。これも「治す」というワードが絡んでいます。咳、のどの痛み、熱、鼻水などの症状をひっくるめて「風邪」と言っています。これらの症状はまとめて「風邪の諸症状」と言います。冒頭の言葉は風邪の諸症状を一発で治す成分がもし見つかったらノーベル賞ものという意味なんでしょう。
実は市販の風邪薬ってのは咳やら熱やらのそれぞれの諸症状にそれぞれ別々に対応した成分を組み合わせしたものでしかないのです。対応というワードも曖昧ですが、これは「治す」のではなく症状を「止める」という意味ですね。症状を「抑える」という言い方もあってます。
風邪の原因は細菌だったりウイルスだったりです。風邪が治るにはそういった病原菌をやっつけなければならないのですが、残念ながら風邪薬の成分達はどれも病原菌をやっつけることはできません。病原菌によってもたらされた症状をクスリの成分のチカラで止めているだけなのです。なので風邪を治しているのではなく「症状を止めている」だけなのです。
風邪薬に入っている物
良く配合されているものを分解して書き出すとこんなかんじです。
- 熱(下げる)、痛み(抑える)の成分
- 咳(止める)、たん(切る)の成分
- くしゃみ・鼻水を止める成分
- のどの痛みを止める成分
- すっきりさせる成分
- 補助的に配合される漢方成分
- 栄養成分
漢方成分と栄養成分は「症状を抑えるだけ」の表現に合わない部分もありますが、概ねこれらの成分の組み合わせで構成されています。そして風邪薬の各製品はそれぞれ成分配合に特徴をもたせたものになっています。従って風邪のどの症状がつらいのかによって選ぶべき商品が変わってきます。
タイプ別の風邪薬の選び方
選び方は何を重視するかによって変わります。咳とか喉の痛みとか症状のタイプに重きを置いて選ぶのか、または使い方で選ぶのか。
- 今出ている症状に合わせる
- 常備薬として備えておく
- 子供が使う可能性がある
- 持病や特定成分にアレルギーのある方が使う可能性がある
普通は今でている症状に合わせ、のどが痛い風邪ならのどの痛みに有効な成分が使われている風邪薬を、咳がひどいなら咳止め関連の成分が充実したものを選ぶのがほとんどでしょうか。
ここからは具体的に書いていきます。それぞれの症状の成分はここに書き出す以外にもいろいろありますが、持病や特殊なアレルギーがあるとかのケースを除き、すっごく単純な選ぶポイントとなります。さらに詳しい使い分けはそれぞれの症状に対応した薬剤の記事を参照くださいませ。(現状、解熱鎮痛成分のページしか用意できていませんが・・・)
【熱が高い風邪】
- イブプロフェン配合のもの。
- 地竜エキス、カンゾウなどの生薬成分がプラスされたもの。
どのメーカーも熱タイプの風邪にはイブプロフェンを用いています。15歳未満に使えないのがネックです。別件になりますが熱が一気に上がったらむしろインフルエンザを疑って病院で検査をうけたほうが良いでしょう。
【のどが痛い風邪】
- 解熱鎮痛剤としての成分がイブプロフェン。
- そこに加えてトラネキサム酸が入っていたら更に強力。
他の解熱鎮痛成分よりもイブプロフェンは特にのどの痛みに効果が期待できます。ただしこの成分が含まれると15歳以上限定となります。小児にはアセトアミノフェンのものしか選択肢がありません。
【咳がひどい風邪】
- 咳止めの主成分がジヒドロコデインの配合量が多い。
- 気管支拡張剤のメチルエフェドリンが同時配合されている。
- さらに咳止め成分のノスカピンが配合されているものもある。
- 加えて去痰成分(グアイフェネシン、アンブロキソール、カルボシステイン、ブロムヘキシン、グアヤコールスルホン酸カリウム)が配合されたもの。
商品のパッケージには鼻の症状が強めに書いてあるのに、成分を見ると中々どうして咳止め関連成分が4種類も入っているなんていう変わり種もあります。
これはあくまでも個人的感想ですが、1と2は最低でも抑えておきたい成分。それプラス去痰成分のどれかががはいって咳関係で3種類の薬剤が入っていたら合格って感じ。ノスカピンまで入っていると「へ~!」って少しテンションが上がる。他に主目的は鼻炎症状のためでもクロルフェニラミンが入っていたらアレルギー性の咳に効果が期待できるので、まさにあの手この手で咳を鎮めてくれる「頼りになるヤツ」となります。
【鼻の症状がつらい風邪】
- くしゃみ・鼻水・鼻づまりに効くクロルフェニラミンの配合量の多いもの。
- 加えて鼻づまりに良く効くプソイドエフェドリンやヨウ化イソパミドが入っているもの。
風邪の諸症状のうち鼻炎関係(鼻水・鼻づまり)だけなら総合感冒薬ではなく鼻炎薬をチョイスという選択肢もあります。製品によってはクロルフェニラミンの配合量がばらつきがあります。多ければ効きますがその分眠気も増します。プソイドエフェドリンはちょっと強い成分なので高血圧など持病がある方は一部使えません。
常備薬で置いておくならこんな配合で
常備薬として備えておくために買う方もいらっしゃいます。一口に風邪と言ってもその原因となる細菌やウイルスは240種ほどあるといい、その病原菌によって症状が変わってくるわけですので、どんな風邪をひくかわからない状態で薬を選ぶことになります。
そうなるとポイントとなるのは家族の構成です。まだ免疫力が弱いちいさな子供さんはとかく風邪を引きやすいです。子供まで含めた家族で使うことを念頭に備えておくのなら小児薬に許された成分しか使えない配合のものとなります。
- 解熱・鎮痛成分がアセトアミノフェンのもの
- 大人だけなら解熱・鎮痛成分がイブプロフェンのもの
ファミリーユーズは解熱成分で別れることになります。それぞれの解熱成分に前述の症状別の配合を照らしてチョイスすればよいか思います。
咳止め成分としては最も良く使われるジヒドロコデインも現状商品としては小児用にありますが、厚生労働省が小児への使用を避けるべきとの指針を最近になって出したためいずれ小児不可になる可能性があります。
今後のファミリー用風邪薬は解熱成分も咳止め成分も健常な大人には少し物足りない成分の配合になってきそうです。その場合常備薬は子供用、大人用でそれぞれ置いておいたほうが良さそうです。
栄養剤を一緒におすすめします
「ドラッグストアでは風邪薬を買おうとしたら栄養ドリンクも勧められた」なんてことあると思います。これはただ売り上げを作りたくて押し売りしているわけではありません(;^_^A
もうここで耳にタコができるくらいになっていると思いますが、風邪薬は風邪を治しません。それぞれの薬剤の力で症状を抑えているだけです。風邪を治す(病原菌をやっつける)のは自分自身の免疫力です。熱が高いと体力を余分に奪われます。咳がひどいと体力を奪われ、質の良い睡眠もとれません。鼻水がひどいと仕事になりません。なのでそれらを止めるために風邪薬のお世話になるわけです。
一方で体は回復にむけて準備をしています。免疫力を高めるためワザと体温を上げています。粘膜から入り込もうとする病原菌を洗い流すため鼻の毛細血管に水分を集めて滲みださせ鼻水をいっぱい出そうとしています。のどにたまった異物を追い出すため激しい咳をおこさせます。
あれ?これって風邪の諸症状ですよね。そうなんです。風邪を治すために体が起こす反応は風邪の病原菌から体を守るための反応なのです。実は風邪薬はその回復のための反応を止めているわけで、いってみれば邪魔しているということもできるわけです。
そこで栄養剤なのです。栄養剤は弱った体力を回復させるものです。安いやつではダメです。1本1000円を超えるニンジンの量が多いドリンクなんてほんとに良く効きますよ。ここでいう「効く」は「治る」のほう。
そこまで高価なものでなくてもそれなりの生薬が入ったものならきっと効果がありますよ。
「風邪薬でつらい症状を抑え、一方で栄養ドリンクで回復をはかる」
セットで使う事でより早く回復することでしょう。なのでおススメしているんですよ!