消毒にはそれぞれの得意分野があるんです

今回のテーマ

『消毒』

消毒といっても色々ありますよね。傷口の殺菌・消毒、まな板の消毒、他にも病院の入り口に置かれているアルコール消毒などなど。色々な消毒の種類があるのは色々な相手(ばい菌)がいるからです。それぞれの目的にあった消毒を使うことが大切です。今回はドラッグストアで扱われる日常的な消毒について説明したいと思います。

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まずはバイ菌を知る

さて、消毒の薬剤を説明する前に、まずは相手を知らなければなりません。

相手とはズバリ「ばい菌」のことです。
一般的にばい菌と一言で表現することもありますが、実にいろいろなのがいます。消毒剤に対する抵抗力も色々で次のように表されます。

やっつけやすい→細菌<真菌<結核菌<ウイルス<芽胞←やっつけにくい

そして大きく分けて3グループに分けられます。

・細菌系
・真菌系
・ウイルス系

芽胞というのは例えば破傷風菌がそうです。地面の中にいる時は芽胞(種)の状態で存在し、外傷に伴って体内に入ると活動を始める菌です。傷を負った直後では芽胞の状態なので実はほとんどの消毒は効果がありません。ウイルスや結核菌、真菌は消毒の種類によって効果がまちまちですので、目的にあった消毒剤を選ぶ事が大切です。

細菌というのは、細胞としての生物の最小単位の要件を満たしていますので一応『生き物』です。細菌は自身で分裂して増えていきます。その時に人の細胞を壊したり毒素を出したりして悪さをします。真菌も自分で増えていくカビの仲間で菌糸が枝分かれして伸びていきます。細菌や真菌は大きさでいうと人の細胞の1/10くらいの大きさです。
しかしウイルスはいわゆる『生き物』ではありません。生き物と鉱物の中間くらいと言われます。生き物ではないので単独で増殖できません。人の細胞や細菌などに潜り込んで、その細胞の増殖とともに増えていきます。大きさは人の細胞の1/100〜1/1000くらいと非常に小さなものです。細菌とウイルスではその構造が大きく違うので消毒も色々なタイプがあるわけです。

・細菌の代表的なもの
ブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ菌、コレラ菌、赤痢菌、結核菌、ボツリヌス菌、破傷風菌、連鎖球菌など

・真菌の代表的なもの
白癬菌、カンジダなど

・ウイルスの代表的なもの
インフルエンザウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、HIVなど

用途で消毒を選ぶ

さてここからが今日の本題です。

上記の様々なばい菌に対し、人に使えるものでこれ一つでOk!みたいなのは残念ながらありません。幅広く効果が得られるものも中にはありますが、人体に触れることを考慮すると人体も細胞のうちですからあまり強すぎるのは使えないわけです。

そこで一般的に使用されドラッグストアに用意されている消毒剤においてのワンポイントアドバイスに入りたいと思います。

消毒を使いたい用途から見ていきます。

「うがい」

・ポピドンヨード   有名品:イソジン
細菌〇真菌〇結核〇ウイルス〇
効果◎ 効果範囲が抜群なので第一推奨です。ただしヨウ素アレルギー✖ 甲状腺疾患✖

・セチルピリジニウム 有名品:コルゲンワンプッシュ
細菌〇真菌〇結核✖ウイルス✖
効果〇 ポピドンに比べちゃうとちょっと弱いですね。ポピドンが使えない人、ポピドンの味が苦手な人に。

・水溶性アズレン
殺菌消毒ではなく炎症を鎮めるのが目的。のどの荒れ・腫れ痛みがある時に。

幅広い殺菌効果が得られるのでポピドンヨード配合のを選んでおくのが無難です。ただし、甲状腺疾患のある方は避けるべきで、その場合セチルピリジニウムかベンゼトニウムのを選びしょう。アズレンのものは用途が殺菌ではなく抗炎症効果を期待したうがい薬です。のどの痛み・荒れを目的とするならアズレンをチョイスとなります。

「皮膚の消毒」

・消毒用エタノール 細菌〇真菌〇結核〇ウイルス〇(ただしノロは✖)、芽胞✖。傷口✖
最も一般的な消毒薬です。幅広く強い消毒効果が期待でき手指の消毒にも使えますが、その分刺激も強いので傷口には適しません。傷口には適しませんが、注射前にスッとする消毒剤でふき取るのは消毒用エタノールです。エタノールはすぐに揮発してしまうのでふき取った直後に無刺激化します。純粋なエタノール(無水エタノール)を水で薄め80%前後の濃さにしたものが最も消毒効果が高いとされ、その濃さのものを消毒用エタノールと呼びます。芽胞以外の菌類のほとんどに効果があり、ウイルスにも効果があります。インフルエンザウイルスには効果的ですが、一部ノロウイルスなど効果がないウイルスも存在します。エタノールはいわゆる飲むアルコールの成分なので食べ物にかかっても全く問題がありません。そのため、まな板や食卓テーブル・冷蔵庫などの除菌にも適しています。純粋なエタノールは飲料のアルコールと同じなので酒税が課せられています。酒税を免れるため(飲めない前提にするため)他の殺菌剤と混ぜ合わせ、酒税分が安くなった他剤混合の消毒用エタノールを買うのが賢い買い方かも知れません。

・アクリノール 細菌〇、真菌✖結核✖ウイルス✖芽胞✖、傷口〇
黄色い消毒剤です。一般細菌(連鎖球菌・黄色ブドウ球菌などの化膿菌)に効果があり、傷口や粘膜にも使えます(しみにくい)。

・ポピドンヨード 細菌〇真菌〇結核〇ウイルス〇、芽胞✖、傷口〇
幅広く効果があります。傷口、粘膜へもOKです。ただし着色してしまうのが難点です。ヨウ素アレルギーの人は✖です。

・ヨードチンキ 細菌〇結核〇真菌〇ウイルス〇、芽胞✖。傷口〇
ポピドンと同じヨウ素系ですので、効果も同じ感じです。傷口、粘膜OKですが着色が難点です。

・ベンザルコニウム 細菌〇真菌△、結核✖ウイルス✖芽胞✖、傷口〇
O-157による食中毒が流行した年に「逆性石鹸」としてもてはやされた消毒剤です。色もニオイがなく一般細菌に効果が高く人体への影響が少ないためデリケートば部位の二次感染を防ぐため点鼻薬などにも殺菌・消毒成分として配合されます。石鹸成分と合わさると殺菌消毒効果が薄れるので、先に石鹸で洗った際は充分にすすぐ必要があります。同じような消毒成分にベンゼトニウムもあります。

・オキシドール(過酸化水素水) 細菌〇、真菌✖結核✖ウイルス✖、芽胞△、傷口〇
人体に使える消毒で唯一芽胞に△がつく消毒剤です。しかし芽胞を直接やっつけるわけではなく、傷口で過酸化水素の分解に伴う酸化により殺菌し、発生する酸素の泡で傷口から物理的に異物を浮き上がらせる効果を期待するものです。小学校の運動場で怪我したりした時にオキシドールが使われるのはそのためです。酸素発泡の仕組みで破傷風の芽胞を追い出そうとするため△が付きますが、殺菌自体は持続力も浸透力も乏しいわりには刺激があるので、使いどころを選ぶ消毒剤です。

・マーキュロクロム(赤チン) 細菌〇、結核✖真菌✖ウイルス✖芽胞✖。傷口〇
皮膚への浸透性も低く、効果範囲は広くはありませんが、傷口にしみないため昭和の頃は最も親しまれた消毒剤でした。近年、その製造過程で水銀公害を引き起こすことから国内では生産されなくなりました。従ってドラッグストアの店頭ではほぼ見なくなりました。

『物品への消毒』

次亜塩素酸ナトリウム 細菌〇真菌〇結核〇ウイルス〇芽胞✖△。傷口✖
広範囲に効果を得られる強力な殺菌・消毒剤ですが、人体へではなく物への使用が基本です。濃い液が手肌に触れると荒れる原因になり、漂白作用もありますので衣類への付着も注意が必要です。身の回りへの消毒として、エタノールが効かなかったノロウイルスにも効果があります。金属への消毒はサビの原因になるので使えません。

クレゾールせっけん液 細菌〇真菌〇結核〇、ウイルス✖芽胞✖。傷口✖
細菌類には広範囲に効果がありますがウイルスにはありません。刺激臭が強いため人体へは使いにくい消毒。排泄物などの衛生に用います。

誤用・事故への対処

誤って飲み込んだ場合
多量の牛乳(卵白を水で溶いたもの、小麦粉を水で溶いたものでも可)を飲ませます。何もなければ水でもいいのでたくさんのませて薄めることで粘膜をまもり吸収を遅らせます。→すぐに受診を。

目に入った場合
流水で15分以上洗い流します。強い水で目を傷めないように、顔を横に向け上から水を流すのが良いです。
痛くて目が開けられない場合は、水を貯めたた容器に顔をつけて水の中でまだたきさせましょう。

今回ここで紹介した消毒薬以外のものはメーカーさんのホームページでも確認できます。

消毒メーカーの健栄製薬さんより資料をお借りしました。健栄さんへのリンクはこちらから。

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